こんにちは。心理士の「ゆう」です。
この記事では,
少年法における「特定少年」の取り扱い
について詳しく説明します。
2022年に民法が改正されて,18歳以上が成人になるのは知っていると思いますが,少年法も改正されるのはご存じでしょうか?
少年法では,引き続き18歳19歳も対象となりますが,18歳19歳は「特定少年」とされて,18歳未満の少年とは一部異なる扱いになります。
異なる扱いのポイントは「新たな3つの保護処分」「ぐ犯の除外」「適用除外となる検察官送致後の刑事事件」の3点です。
そこで,今回は,
- どうして特定少年と18歳未満の少年で扱いが違うの?
- 特定少年と18歳未満の少年の扱いの違いを教えて!
といった疑問や悩みに答えていきます。
子育て中の大部分の方にとって少年法は余り身近な法律ではありませんが,18歳19歳の子どもの問題行動に悩んでいる方は,いざというときのための知識として参考にしてください。
なお,2022年の少年法改正の概要については,次の記事を参考にしてください。
特定少年について
先ほども少し触れたとおり,2022年から民法が改正され,成人年齢が18歳となります。
一方で,今回の少年法の改正では,国会等で様々な審議がなされましたが,結果として18歳19歳の少年については,引き続き少年法を適用することとなりました(少年法の条文はこちら)。
18歳19歳の者について,民法上の改正で成人と位置付けられましたが,まだまだ十分には成熟しておらず,成長発達途上にあって改善する可能性が高い存在であると考えられました。
それで,「特定少年」という名称がつけられ,18歳未満の者とも20歳以上の者とも異なる取り扱いをすることとなったのです。
次の3つのポイントが取り扱いの大きな点になります。
- 新たな3つの保護処分
- ぐ犯の対象から除外
- 適用除外となる検察官送致後の刑事事件
1つずつ見ていきましょう。
他にも,細かい変更があるので,詳しく知りたい方は法務省のホームページをご覧ください。
新たな3つの保護処分
1つ目は,「新たな3つの保護処分」についてです。
少し「保護処分」について説明していきます。
保護処分とは,非行のある少年に対し,その性格の矯正や環境の調整を目的として行われる処分のことを指します。
保護処分の種類は,
- 保護観察
- 児童自立支援施設又は児童養護施設送致
- 少年院送致
の3種類があります。
期間については,ケースによってかなり異なるのですが,保護観察はおおむね「2年間」,児童自立支援施設又は児童養護施設送致は「義務教育終了まで」,少年院はおおむね「半年から1年間」です。
いずれも,明確な上限は定められておらず,特に保護観察と少年院については,行状が悪ければ20歳になるまで続くことがあります(20歳を超えても続くこともあります)。
今回の改正では,これらの3つについては,18歳未満の少年だけに適応されることになりました。
では,特定少年(18歳19歳)については,どうなるのでしょうか?
今回の改正で,「特定少年の保護処分」としては,次の3つが新たに規定されました。
- 6月の保護観察
- 2年の保護観察
- 少年院送致(最大3年)
特定少年については,裁判所が,少年が犯した罪の責任に照らして許容される限度を上回らない範囲内で,対象者の処分を選択することになりました。
そのため,従来の保護処分と違って,「上限」が定められたことが大きなポイントになります。
特定少年には,児童福祉法の枠組みである「児童自立支援施設又は児童養護施設送致」はなくなりました。
ぐ犯の対象から除外
2つ目は,「ぐ犯の対象からの除外」についてです。
まずは,ぐ犯少年について簡単に説明します。
ぐ犯少年とは,次に掲げる事由(ぐ犯事由)があって,その性格又は環境に照らして,将来,罪を犯し,又は刑罰法令に触れる行為をするおそれがある少年を指します(少年法第3条第1項第3号)。
- 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
- 正当の理由がなく家庭に寄り付かないこと。
- 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し,又はいかがわしい場所に出入りすること。
- 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。
少年法では,こうした「ぐ犯少年」を審判の対象としています。
つまり,非行や犯罪に及んでいなくても,警察に保護され,審判を受けて保護処分となる可能性があるということです。
不良少年を早期に発見して,適切な保護を加えて,犯罪の発生を未然に防止しようとするものです。
少年によっては,資質的な問題が大きかったり,家庭環境が悪くて家に帰せない場合には,「少年院送致」になることもあります。
では,大人であればどうでしょうか?
犯罪に及んでいなければ,逮捕されることはありませんし,刑務所に収容されることは絶対にありません。
犯罪をしたという事実とそれに伴う責任(行為責任)がなければ,逮捕され,刑務所に入所することはありえないからです。
特定少年についても同様の考えから,ぐ犯の対象から除外されることになりました。
少年法の適用除外となる検察官送致後の刑事事件
3つめは,「適用除外となる検察官送致決定後の刑事事件」についてです。
重大事件を起こして検察官送致となった少年は,大抵の場合,再び勾留され,検察官に起訴され,その後裁判を受けて刑務所に送致されることになります。
この「検察官送致後」から裁判の結審までの間の刑事手続や処分などについて,審判時20歳未満の者は「少年」として特別の措置が適用されていましたが,今回の改正で,特定少年についてはその特別の措置が適用除外となります。
簡単に言うと,「重大事件を起こして,裁判を受けることになったんだから,18歳19歳は大人と同じように扱うよ。」ってことです。
今回は,代表的なものとして,次の4つが挙げられます。
- 取扱いの分離の除外(第3項)
- 不定期刑の除外(第4項)
- 換刑処分の禁止の除外(第4項)
- 仮釈放の特則の除外(第5項)
1つずつ見ていきましょう。
特定少年の取扱いの分離の除外
少年法第49条第3項には,少年が刑務所などに入所することになった場合,20歳以上の受刑者とは接触させないようにしなければならないという規定があります。
これは,少年が重大事件を起こして裁判を受けて刑務所に入ったとしても,少年であって精神的に未熟な存在であり,他の受刑者と接触させることによって悪風感染を防がなければならないという考えから規定されていたものです。
今回の改正で,特定少年であって重大事件を起こして裁判を受けて刑務所に入ったのであれば,特別に他の受刑者と分離する必要はなくなります。
特定少年が入るのは「少年刑務所」になるので,20歳以上26歳未満の受刑者と一緒に生活することになります。
特定少年の不定期刑の除外
少年法第52条には,少年に対して懲役や禁錮の判決を出すときには,「不定期刑」を言い渡すこととされています。
不定期刑とは,刑期の下限を短期,上限を長期と定めることで,刑期に幅を持たせるものです。
大人であれば有期懲役として,例えば「懲役5年」などとなりますが,少年であれば不定期刑として,例えば「懲役3年以上5年以下」などとなります。
本人の改善努力によって社会復帰の時期に弾力を持たせる効果を期待しています。
今回の改正で,特定少年については,不定期刑を言い渡すことができなくなります。
特定少年の換刑処分の禁止の除外
大人であれば,罰金刑を受けたとき,もしも支払うことができない,支払わないときには,「労役場留置」として罰金の金額に応じて刑務所に収容されて作業をすることになります。
しかし,刑務所での作業は,教育を目的としない身柄拘束ですし,少年の情操の保護の観点からも,少年について労役場留置の言い渡しはしないこととされていました(少年法第54条)。
今回の改正で,特定少年について罰金刑が言い渡され,支払うことができない,支払わないときには,代わりに労役場留置の言い渡しをすることができるようになります。
特定少年の仮釈放の特則の除外
少年法第58条では,少年の改善する可能性や教育が入りやすい点に着目して,改善更生の意欲の喚起を図るため,仮釈放までの期間を大幅に短縮する特例を規定しています。
例えば,無期刑を言い渡されている者であれば,大人であれば10年の経過が必要ですが,少年の場合は7年に短縮されます。
また,有期刑として,例えば懲役10年を言い渡された場合については,大人も少年も同様に刑期の3分の1の経過が必要ですが,不定期刑では短期の3分の1の経過となります。
今回の改正で,特定少年について仮釈放の特則が除外され,仮釈放の期間については大人と同じ期間の経過が必要となります。
まとめ
今回の記事では,少年法における「特定少年」の取り扱いについて解説してきました。
今回の一部改正により,18歳19歳の「特定少年」の処分や手続などについて,18歳未満の少年とは扱いが一部変わることになります。
なお,今回の改正では変わらない点も多くありますので,少年法の基本を学びたい方は次の記事を参考にしてください。
ご相談やご質問がある場合は,こちらにご連絡ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。